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沖講師インタビュー|新人に伝えたいことは「自分の人生に責任をもつこと」

2019.05.28

それぞれの分野のプロフェッショナルである、リ・カレントが誇るユニークなプロフェッショナルパートナー講師たち。それぞれの分野のプロであり、現場での失敗体験から明確なメッセージを持っていることから、「非常にユニークで実践的」とのお声を数多くいただいております。「ウェブロコ!」では、そんなリ・カレントのプロフェッショナルパートナー講師が、人事・人材開発に関する熱い想いを語ります!

今回の「ウェブロコ!」は、冷静と情熱の間に、愛ある場を生み出す切れ味抜群トレーナーの沖みちるさん。

教育コンサルティング企業において、営業、プログラム開発、講師など幅広い業務に従事した経験を活かして、さまざまな企業における人材育成の課題解決に企画段階から参画してきた後に独立し、新人・若手の研修を中心に積極的に企業の人材育成に取り組んでいます。

豊富な事例や具体例を交えた切れ味抜群の語り口と、スキル・知識を現場で活用するための実践的な手法。さらには関西人ならではのユニークな言葉のセンスもあり、人材育成の方々のなかに数多くのファンがいることでも知られています。

そんな沖さんの、研修の裏に秘められた熱い想いを聞いてみました!

沖講師インタビューPh

 

企業における人材育成においても
伝えたいことは「自分の人生に責任をもつこと」
若い人ほど「可能性があること」に気づいてほしい

楠:いま沖さんが講師として、一番メッセージを届けたい対象層ってどういう方たちでしょうか。

沖:入社して間も無い、まだ社会人として一歩を踏み出したばかりの人たちですね。私のメッセージとして「人生は自分次第」っていうのがあって、「自分の人生、腹を括れ」っていうのがあるんです。それを最初に伝えたいんですよ。だから、なんだったら社会人になる手前の人でも全然いいぐらい。でも、彼ら多くはまだビジネスの世界で生きていくリアリティがない。だから新生社会人。理想とはかけ離れた環境とか、望まない仕事とか、選べない上司とか、色々難しいことはあると思います。だからこそ、それにどう向き合うのか?捉え方をセットアップして送りだしたいっていうのがありますね。

楠:やっぱり沖さんにとって、社会人になった最初の4月は大事ですか。

沖:私はすごく大事だと思っているんです。「人生はこうだよ」とは言えないけど、「大丈夫だ」っていうこと言いたいんですね。

ここで私が言っている「大丈夫」っていうのは、あらゆる仕事とか環境は、向き合い方次第で自分の人生の糧にできるよ、ということ。目の前の出来事に傷ついたり疲弊して終わるかどうかは、その仕事の先にあることを少しでも意識できるかどうかだと思っています。

新入社員でなくても、その後でも言えることはあるんですけど、アプローチの仕方がちょっと違うんですね。数年仕事をした人って、最初に仕事や環境に対するHave to、何々しなければならないという前提をとらなくてはメッセージが入らないんです。正直今の私にとっては、研修という枠の中では限界を感じます。

楠:その想いのベースになっているものはなんでしょう。

沖:私自身、振り返ったときに自分の人生は自分で決めている、そして何とかなるっていう感覚があって。だから私はいつも幸せだったっていうことに気がついたんですよね。逆に言うと、その状態であれば、どんな状況でも結構人って幸せになるんじゃないかっていう思いがあります。私は仕事に対してはフルコミットでやりますけど、人間関係も上手ではないですし、フラストレーションをためやすい人間で、性格は結構面倒なんです。それでも、いつも幸せであるといえるのは、突き詰めていくと「自己決定している感覚」が常にあるからだと思います。

もうね、お気付きだと思いますけど、私が提供したいことって、自分がやってきたこと、信じてきたことを形にしただけなんですよ(笑)でも、実際「この人って、幸せだろうな」って感じる人はみんな自己決定に基づいて生きていると、後付けのようですけど、本当にそう思うんです。

楠:やっぱり自己決定だなって思った瞬間というのは、どういうときにそれを感じられたんでしょうか。

沖:自己決定性という言葉をもらったのはアドラー心理学です。その前の感覚値だけでいうと、会社を辞めてフリーになった時、なんか毎日すごく楽しかったんですよね。まともに仕事なんてないし、先のことは何もわかんないのに、何でこんなに楽しいのかなと。そして気づいたんですよね、この瞬間を構成している要素のすべてを私自身が決めているからだと。実際に決定しているかどうかじゃないんですよ、決定している感覚があること。たくさんの支えや繋がりはありますよ、もちろん。でも、この自分で決めている感覚が、私の幸福を生み出しているんですね。

 

これから50年間、自力で食べていける市場価値
既存のスキルや知識では足りない世界
自分の人生を手放さない意識から始まると思う

楠:それから、新人研修プログラム「Core&Shift」の開発につながっていくわけですね。Core&Shiftはどうやってできあがったものなのでしょうか?

沖:CoreとShiftの根幹にあるのは自己決定性、「自分の人生は自分次第」ということです。彼らの人生は長い。少なくとも向こう50年間は自力で食べていく必要があって、それってもう既存の知識やスキルの話ではないですよね。

いまの企業研修プログラムは、多くの場合、会社や上司などから見たあるべき姿がまずあり、そこにどうやってアジャストしていくかということが基本思想になっていますよね。でも、彼らに求められていることは「既存を超える」ことじゃないですか。それを既存の中のあるべき姿で達成していけというのは、矛盾があります。

沖:正直言ってしまうと、そのためのソリューションは何でもいいと思っています。これでないと言えない、ってことはないので。

さらに一番望ましいのは、私の文脈で言う「大丈夫」を企業の中の人が言ってあげられること。自分の可能性に気づくためにも、新人、若手の人には、自分についてまずもがいてほしい、古いパラダイムに染まる前にあがいてほしいんです。企業の中の人が、そのもがきやあがきを「大丈夫だよ、いいんだよ」って言ってあげて欲しいです。でも実際はそうじゃないのが現実。企業の外界に触れていなければ、その企業が設定しているビジネスの時間軸で物事を判断するようになります。新人たちが向こう50年間自力で食べていく必要のある人たちだって気づけない。それでは「大丈夫」っていう言葉は出てこないと思うんです。

楠:可能性をつぶす存在なのでしょうか。

沖:そうじゃない人も、もちろんたくさんいるんですけど、割合は高くないと思います。これからの時代に必要な生き方を若い人たちの目線で考えることはできないし、許容することもできない。

ただ企業のために生きろ!と育てられてきた方々が、今の経営者層や管理職層には多いと思います。自己決定性に生きることが、自分の幸福につながるということを教えられていないし、気づく機会もなかったと思います。だからそういった人たちを否定するつもりはありません。

楠:企業そのものが変化している?

沖:企業という枠の中で「求められることを返しましょう」というのがかつての企業人的生き方だったとすれば、今は、「企業の設けた枠では、企業は生き残っていけなくなります。だから、あなたの人生と我々をリンクさせてお互い共存して生きていきましょう」という状態になっていると感じています。社員もいかに自分の人生の主人公として生きるか?が問われる時代なんじゃないかと思いますし、企業がそれを支援する時代だと思っています。

楠:その支援について、沖さんはどう関わっていくんですか?

沖:私が請け負っている企業研修は、あくまでも人材と企業の利益循環における一つの構成要素でしかないですよね。企業と従業員の関係が変わっていくのであれば、その変化に応じたソリューションを提供する必要があるんですけど、それがどんなものか?から提案できなければ、私の存在意義はあまりにも小さいと思います。つまり何をしたらいいか?の回答をお客さまに求めるのは違うかな、と。

楠:Core&Shiftのコンセプトが生まれるまでに、どのような思考がありましたか?

沖:いまの若手の人たちを見ていて、二極化するなと思っていたんです、自分の世界の中で生きているタイプと、外の人たちに合わせていく人。でも、「これは両方必要だよね」と思うところがありました。そこは新人、若手研修をやってきたなかで、すぐにシンプルに出ましたね。

自分の人生に責任をもって生きるのであれば、Coreが最初に来るべきだと思っています。でも、Coreは扱いが難しい。間違えると単なる勘違いな人になってしまうし、自分の可能性に限界を設けてしまうこともあります。何より、かつての私がそうであったように、ズレたCoreって成果が出せないんです。だからShiftについても同じレベルで大事だと感じたんですね。なので、プロフラム自体は50:50ぐらいで形にした感じですね。でも微妙なメッセージのさじ加減は、その場で決めています。

 

きっかけや機会は色々ある
それでも自己決定性に生きていれば
必ずいつか自分の想いにつながるはず

楠:沖さんは、もともとどうして講師になられたのでしょうか?

沖:最初は業務命令ですね。もともとはアパレル業界でクレーム対応などをしてきたので、人がビジネスに与える影響みたいなことをなんとなくネガティブな側面から捉えていたんですね。ご縁あって研修会社に転職したんですが、そのときにはバックオフィスで入っているんですよ。だから講師になるといっても研修会社に入ったあとで、社員だからするんだな、くらいの感覚でした。

楠:そうなんですか、バックオフィスとはちょっと意外ですね。(笑)

沖:そうですよね。(笑)ただ思い返してみると、やっぱり後ろで黙っているタイプじゃなかったですね。その後、営業なども担当しましたが、休憩時間とかも結構前にぐいぐい出て行ってフィードバックをしていたので、講師はやりにくかっただろうなと思います。たぶん、その当時から「私だったらこう伝えるよな」とか、「これが本質的なんじゃないか」みたいな、譲れないものが私のなかにあったんでしょうね。当然、「だったら、あんたが講師やれば?」ってなりますよね?(笑)だからやってるんだと思います。

でもやっぱり自分の意思がそこにあれば、きっかけや最初の状態がどうであれ、自分が信じることに繋がっていくと思いますね。

自分の人生を自分で創っていく感覚

私は「なんでもない人」
だから、私が伝えたい

楠:沖さんは独立されてからいま何年目でしょうか?

沖:7年目になりました。4月で丸6年だったので。

楠:この6年ってどんな6年でしたか。

沖:どんどん楽しくなってきていますね。まず所属するコミュニティと、そこでつながる人たちが増えました。人数もそうだし、多様性っていう意味でも増えましたから、自分のCore&Shiftが豊かになってきています。
もうひとつは、自由度が高いので自分のやりたいこと、言っていることが形になっていったっていうのがすごく大きいです。

楠:独立されてから、ご苦労された経験などはありますか。

沖:独立してからは、苦労という苦労はありません。だって好きに生きていますから(笑)でも最近になって「そろそろ自分の立ち位置を明確にしないとな」という感覚はあります。私は学歴も、ビジネスキャリアも、スキルも、本当に「なんでもない人」なんです。ただこの世の中はなんでもない人が圧倒的に多い。そのマジョリティである私だからこそ「あなたの人生はあなたのものだから」って伝えたいっていう気持ちが大きいんですね。

そうすると、与えられたプログラムでは窮屈になることがあって…そのあたりはお客さまとエージェントとの三者関係において葛藤が生まれることがあります。

楠:本当はもっと関わりたいっていうことですか。

沖:そうですね、お客さまからのメッセージの預かり方も、対応した研修設計もフリーダムであるほうが性に合っていますね。だから、全面的に信じて任せてくれるリ・カレントさんと一緒にやらせてもらっている状態はすごく良いですね。

講師としては、率直であることが大事
大事なことを大事にしているか?
人としての在り方はすごく問われる

楠:研修をやられるときに、研修の場のなかで沖さんが気をつけていること、こだわっていらっしゃることって何かありますか。

沖:まず講師としては、率直であるっていうのは大事にしています。私にとって率直ではない時というのは、相手の評価を気にしている状態なんですよね。これって、受講者を主軸にした場なのに、受講者に意識が行っていないでしょ?違和感がありますよね。だから率直であることは、その場の主人公をブラさないためにも、大事なんですよね。

でもそれ以上に気をつけているのは、自分が講師として大事だと思うことをちゃんと体現することですね。有言実行、っていう言い方がわかりやすいかも。当たり前のようですけど、このあたりの人としての在り方って、すごく問われていると思っています。

楠:率直であるために、何か工夫されて

いることはありますか。

沖:なんか違うよなって思ったら、後の影響だとか場づくりだとか考えずに言葉にします。たとえば、些末な例ですけど、新入社員が休憩時間から遅れて戻ってきて素知らぬ顔をして着席した。それって私としては違和感があるし、その場の責任者として言うべきことってありますよね。お客さまと約束した役割としてもあるし、先輩ビジネスパーソンとしてもあると思うんです。そのとき私は躊躇しないですね。「研修内容に入る前に今思ってること率直に言いますね。あなたの態度は社会人としてすごく違和感がある」みたいな感じで伝えます。受講者にとってインパクトの大きいことほど、ストレートかつ短くショートに言うよう工夫しています。

楠:それは受講者、特に若手からはどうやって映って

いるんでしょう。すごく関わってもらっているという感じがするんでしょうね。

沖:「うそは言わないな」というのは、早い段階でわかってくれていると思いますね。若い人ほどそういった感度は高いんです。だから、裏の話も私は結構しますよ。例えば、「ビジネスの世界なんて、理不尽で不平等でグレーな世界。そこで自分が何を考え、どんな行動をして、どういった結果を残していくのか。その繰り返しが仕事そのもの」とか、ですね。このメッセージの場合は、その後に「どうすればいいかなんて、いつも答えはない。そんな中でいかに試行錯誤できるかが仕事のおもしろさだと思う」と言っていると思います。私自身はそう思うから。そういう体感を持ったリアルな話ができるかどうかは大事ですね、私のなかで。

楠:今の若手ってそういうことを、すごく大事にしていますよね。人を見ているから、最初、こっちが探っていくと向こうも探ってくるし。結構、熱が入ってがっと本気で入った瞬間に、向こうからぐっと来るみたいなのもありますよね。そういう意味では、特に新入社員の一番最初というのは、講師として、人としての存在の在り方みたいなのを、すごく問われる感じもしますよね。

沖:そうですね。だから、信念とか信条とかがない人には、やっぱり受講者もついていけていない感じがするんです。
一方で、なんかこれまでよりも割と私は距離を取るというか、ぐいぐい入っていかなくなっているかもしれないですね。休憩時間なども、受講者に対して関わり方についても、相手と一定の距離をうまく取りたいなと思っていて。

楠:それはなぜ?

沖:ちょっとうがった見方なんですけど、私から入っていって関係性をつくるじゃないですか。私は楽なんですけど、研修後の現場ではそうはしてくれないと思うんですね。「相手から関係をつくってもらえると思わないで」っていう感じにしています。

楠:ここ数年で意識的に変えているんですか。

沖:そうですね。2016年あたりからちょっと変わりました。意図的に変えたというよりも、結果として、かな。「沖さんが上司だったらよかった」と言われる研修はダメ、完全にコケていると思います。配属後の受講者の可能性を下げてしまう。あくまでも研修講師が見据えるべきは現場なので。しかも、私が上司だったらいい?見る目ないなって(笑) 人はそんなシンプルではないからねって。

「自己決定性ある人づくり」は
企業や仕事に還元できるはず
新たなロイヤリティを生むと信じている

楠:受講者の状態を見るとか、それこそ可能性を広げるとか、そういうトーンでは一貫されていますよね。これから挑戦されたいこととかありますか。

沖:自己決定性というところについては、もう少し多様な対象であったり、アプローチをしていけたらいいなと思っています。あと、個人に向けて、何かそういった場をつくれるといいなと。そのためのプログラムはすでに用意しているので、今後の展開を楽しみながら考えています。

楠:企業だとどういう会社とか、どういう人たちと一緒にお仕事をしたい、というのはありますか。

沖:基本的な考え方として、やっぱり自己決定性というところに共感してもらえる企業、人でしょうか。社員が自分の人生に責任を取る生き方というのは、彼らの中に沢山の選択肢を生みます。それでも社員が、自己決定性をもって自分の人生を歩んでいけるようになれば、、結果として企業や仕事に対するこれまでにない社員のロイヤリティが生まれていくと信じています。そして、そう考える企業は少しずつですが増えていると感じます。

楠:やっぱり、思想ですよね。人に対する想いみたいなところが握れているというか。同じ土台に乗っていれば、いかようにもHowはつくれますからね。

沖:そうですね。確かにCore&Shiftのプログラムを採用するか否かは別として、講師としてご指名いただく企業は、基本的にCore&Shiftの思想に共感くださっているケースがほとんどですね。

楠:最後に、このコラムを読んでいる人事の方に向けて、伝えたいことはありますか?

沖:現在のCore&Shiftは、いまの時代に必要だと思っているのですが、求められるコンセプトや、プログラムの中でCore&Shiftの比重は今後も変わり続けていくと思っています。講師としての市場価値は何か?何が提供できるのか?きちんと自己投資と自己研鑽を続けながら、つねに自分自身のCore&Shiftを創っていくことが必要だと自覚しています。受講者に対して常に伝えていますが、「変わり続けることを前提とする」在り方は、まず私自身が体現すべきなので、ここについての努力は、信じてくださっている企業や研修ご担当の皆さまにこの場でお約束したいと思います。

楠:ありがとうございました。